前かがみで楽になり、反らすとつらくなる

背骨の中には、神経の通り道(脊柱管)があります。この通り道は、前かがみになると広がり、腰を反らすと狭くなります12。

スーパーでカートを押すと楽に歩ける、自転車なら平気、という方が多いのはこのためです。運動を選ぶときも、この「前かがみ方⁠向」が軸になります。

運動は、治療の選択肢のひとつです

日本のガイドラインでは、狭窄症に運動療法を「行うことが提案されています」1。

理学療法士などの専門家の指導を受けて行う運動は、自分だけで行う運動よりも、痛みや体の動きが良くなったという結果が、日本の試験でも報告されています3。

そこで、おすすめの順番は次のとおりです。

  1. まず、主治医や理学療法士に、自分に合う運動を教わる
  2. 教わった運動を、家でも続ける

よく使われてきた運動

これまでの試験で使われてきたのは、前かがみ方⁠向の体操やストレッチ、筋力の運動、そして自転車こぎです45。どの運動がより良いかは、まだわかっていません。

両膝抱え

両膝抱えの2つの段階:あお向けで膝を立てる、両膝を胸に引き寄せて両手で抱える
両膝抱えの2つの段階:あお向けで膝を立てる、両膝を胸に引き寄せて両手で抱える
  1. あお向けに寝て、膝を立てます。頭の下にたたんだタオルを置きます。
  2. 両膝を胸に引き寄せ、膝の下を両手で抱えます。頭は床につけたままです。
  3. 腰がのびるのを感じながら、ゆっくり呼吸をします。

骨盤を後ろに傾ける運動

あお向けで膝を立て、おへそを床に近づけるように、腰と床のすき間をなくします。お腹の力で数秒保ちます。

自転車こぎ

家庭用のエアロバイクを、少し前かがみでこぐ
家庭用のエアロバイクを、少し前かがみでこぐ

自転車をこぐ姿勢は自然に前かがみになるので、症状が出にくいまま体力をつけられます。

椅子スクワットは、鍛えるのページにあります。

手術と運動は、どちらも選べる治療です

手術を考える段階の人を対象にした海外の試験では、2年後の体の動きの改善は、運動でも手術と近いものでした6。

手術は、運動などの治療で良くならないときや、症状が重いときの選択肢で、良くなるのが早いという特長があります1。どちらを選ぶかは、主治医と一緒に決めていきましょう。

手術を控えている方も、手術前の運動で、脚の痛みや歩ける時間が良くなったという試験があります7。

歩くときの工夫

ここからは、脊椎外科医としての経験からのアドバイスです。

  • 痛くなる前に休む:限界まで歩いてから休むより、手前で小刻みに休むほうが、結果として長く歩けます。
  • 休み方を工夫する:壁や手すりに手をついて少し前かがみになる、ベンチに座る、しゃがむ。
  • 小分けに歩く:一度に長く歩くより、何回かに分けて。
  • カートを押す:前かがみになりやすく、楽に歩ける方が多い道具です1。杖は、転ばないため、安心して外に出るための支えとして使いましょう。

寝るときは

寝る姿勢に、決まった正解はありません。眠っている間に、寝返りで姿勢は変わります。楽になりやすい姿勢の一例として、横向きで膝の間に枕をはさむ、あお向けで膝の下に枕を入れる、という方法があります。

運動を続けるための制度

病院でのリハビリには、原則として期限があります8。その後も運動を続けたいときは、介護保険のリハビリ(デイケアなど)が使えることがあります。脊柱管狭窄症は介護保険の「特定疾病」なので、40〜64歳でも対象になることがあります9。まずは、お住まいの地域包括支援センターに相談してください。

もっと詳しく知りたい方へ

狭窄症の治療には、運動のほかに、お薬、神経ブロック注射、手術、脊髄刺激療法(SCS)などがあります。脊髄刺激療法は、背骨の中に細い電極を入れ、弱い電気で痛みを和らげる治療です。

それぞれの治療の特徴や選び方は、同じ医師が監修する姉妹サイト「腰⁠痛⁠・⁠狭⁠窄⁠症⁠ ⁠相⁠談⁠室」で詳しく解説しています。「運動療法」や「脊髄刺激療法(SCS)」のページもあります。

すぐに受診してほしいとき

  • 足の力が急に入らなくなった
  • 尿や便が出にくい、もれる
  • 安静にしていても痛みが治まらない